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初恋 2

Author: 煉彩
last update publish date: 2026-01-05 00:04:27

 大学に着き、講義を受ける教室に入る。

 私の友人、伊藤 優菜《いとう ゆうな》は先に来ていて、隣の席を空けてくれていた。

「おはよう。席、ありがとう!」

 声をかけると音楽を聴いていたのか、耳からイヤホンを取り

「おはよう、もちろんだよ。前の席とか嫌だもん。美桜に連絡したのに、返事くれなかった」

「ごめん。スマホの充電なくて、見てないんだ」

「朝から充電ないとか、キツイじゃん。この教室近くに充電口ないし、モバイルバッテリーかしてあげようか?」

「えっ!いいの、助かる。ありがとう」

 優菜とは大学で知り合った。

 入学式の席が隣で、偶然にもゼミ(クラス)も一緒になった。

 話も合うため、約三年間で親友と呼べるほどの仲になり、学内ではほとんど一緒に過ごしている。

 優菜は実家から通学しているが、私は田舎から上京してきたため、一人暮らし。

 狭いアパートだが、予定が合えば泊りに来てくれる。

「優奈に聞いてほしいことがあるんだけど」

 講義が始まる前に今朝の出来事を優菜に話した。

「えっ。マジ?その人、神じゃん!しかもイケメンだったんでしょ?」

 優菜は興味津々というような顔で、私の話を聞いてくれた。

「これって、一目惚れってやつかな?優菜は知っていると思うけど、恋愛したことがなくて」

 ハハっと誤魔化しながら、優菜に助言を求めた。

「たぶん、一目惚れっていう感情で合っていると思うよ。いいな!私もイケメン見たかったぁ」

「優菜は彼氏がいるじゃん」

 大学は違うが、高校生の時から付き合っている彼氏が優菜にはいる。

 会ったことがあるけれど、爽やかな同じ歳のスポーツ男子だ。

「大学入ってもさ、バスケバスケって言って全然会ってくれないんだよね」

 優菜の彼氏は、バスケットボールのサークルに所属をしている。

 中学の時からバスケ部、高校の時には全国大会にも出場するほどで、名の知られているプレーヤーらしい。

「もう別れようかな」

 最近の優奈の口癖だ。

 別れなよとも言えないし、頑張りなよとも伝えられない。

「私の話はおいといて、美桜が男の人をかっこいいとか私に言ってきたの、初めてじゃない?」

「そう言われてみるとそうかも」

 私は昔から男性に興味がなかった。

 クラスの女子が騒ぎ立てるような恋愛話も、誰々くんがかっこいいとかそういった話題も、私はいつも話を合わせるかのように聞いていた。

 私は、両親の記憶がない。

 事故で亡くなったと聞いていたが本当は離婚をし、親権があった母親も自分を置いてどこかに行ってしまったという事実を後から知った。離婚の原因は、父の浮気らしい。離婚してからは、父を忘れるように母もいろんな男性と関係を持ち、私を残して当時の彼氏といなくなってしまった。

 その事実を知ったのは小学校高学年くらいの時だ。「離婚」とかそういった意味を理解できるようになった年齢、クラスメイトの男子から教えられた。

「お前の母親、お前を置いて違う男の人とどっか行っちゃったんだって?」

 最初は何を言われているのかわからなかった。

 誤解だと否定をし、泣きながら帰宅をしたのを覚えている。

 私を育ててくれたのは、母の実の姉だった。

 |実の姉《お母さん》にクラスメイトから言われた言葉を話し、泣いた。

 子どもだった私は、否定をして慰めてくれるかと思っていた。

 けれど、現実はそんなに甘くはなく

「ごめんね。美桜の本当のお母さんは生きているの。でも、どこにいるのかわからないの」 

 それだけで、母が私を捨てたんだと十分理解できた。

 どこでそんな話が広がったのかわからなかったが、クラスメイトからは「捨てられた子」と陰口を言われるようになった。

 特に男子からは話題のネタにされ、その時のトラウマから男性をしばらく恐いと思うようになった。

 成長してもそれは変わらず、会話はできるが誰かと付き合うとか恋愛に対して興味が沸かない。

 実の姉《おかあさん》には本当の子どもがいたし、早く高校を卒業して自立したいと考えていた。

 大学に入学してからは、自分の家賃や生活費などを稼ぐために、講義がない時はバイトをしている。

 仕送りをしてくれると言ってくれたが、迷惑をかけたくない。

 自分で何とかできる部分は、できるだけ自分で稼ごうと思っている。

 だから、今日初めて会った男性《ひと》に一目惚れなどという感情が生まれたのは不思議。

 でもこれは「恋」なのではないか、そう思う。

 こんなにも男性に対して、ドキドキするのは初めてだから。

「また会えるといいね」

 ふいに優菜が呟く。

 まるで私の心の中を代弁してくれたかのようだった。

 また会いたい……。

 こんな夢物語、続かないよね。きっと。

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